クラシック試験室から 第22回
■気が付けば師走…
クラシック試験室のキタです。
今年はいつまでも暑いと思っていたのですが、気が付けば街はすっかり師走の様相です。
このブログを書き始めたときに、紅白歌合戦の出場歌手が発表されましたが、「知らない歌手のなんと多いことか!」と、愕然としました。
なにか、寂しい書き出しになりましたが、いつも通り試験室から様々なお花の試験を通じてみて、感じたことをポツポツと書いてみたいと思います。
■慣性の法則… 人間って変化したがらないですよね!
「慣性の法則」という物理法則をご存じですか?物が止まっているとそのまま動かず、動き始めると止まりにくい、というアレです。これって、実は私たち人間の行動にも当てはまる気がしています。
たとえば、日々のルーティンや「これで問題ないから」という理由で続けている仕事。組織の中でも、昔ながらのやり方がいつの間にか「当たり前」になっていること、ありませんか?
「組織」という集団には、強い慣性の力が働いていて、その風土を変えるのはとても難しいと感じますよね。
元来、人間(日本人?)は変化を好まず、安定していることを望むものかもしれません。過去の経験は、その人の中で一応の成功体験となっており、それを繰り返せば大きな過ちは起こらないという発想なんでしょうね。
以前、組織開発に関連して習ったことですが、人は「嫌われる」「馬鹿にされる」「無視される」ことを避けるためにはどのような防衛行動でも無意識にとってしまい、それが組織としての生産性を落とすというものでした。慣性の法則で日々過ごしてしまうというのも、一つの防衛行動かもしれませんね。
…偉そうに言う私自身も、プライベートでは毎日同じことの繰り返しで、およそ変化とは程遠い生活をしております…(汗)
■慣性の法則どころではなく、減衰している…?
身の回りでは、いろいろなことが起きていますが、だんだん新聞も読まなくなってきている自分がいます。
新聞は定期購読していますが、しっかり読もうと思うと1時間以上の時間を要するので、時々読まない日というものが生まれ、だんだん読まずに済ませているといった感じになってきています。
ネットニュースで、自分の興味に合わせた記事だけ読んでいれば十分という説もありますが、変化を起こさないどころか、減衰しているような気がして、背筋が寒くなってきます…
慣性の法則に絡んだ、自虐的な話をもう少し…
年を重ねるにつれて、日常の行動が昨日のコピペみたいになっている感じもしてきています。
一方で、遺伝子情報を構成するDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)は複製(コピー)するたびに、一番端にあるテロメアと呼ばれる構造が欠けて短くなり、細胞寿命のタイマーともいわれています。
要はコピペを繰り返しているだけだと、細胞も劣化していくという、怖いようなたとえ話ですね…
だからこそ、挑戦とイノベーションが必要って話です(奮い立て自分!)。
■最近読んだ本から…
「ネットでは検索できるが、本屋や図書館には発見がある」という話を聞いたことがあります。あまり、植物やお花関連の本が少ない中で、本屋に立ち寄ると、時々「発見」というか面白そうな本との「出会い」があり、そんな時はついつい衝動買いしてしまいます。
今読んでいるのは、ベレ出版の「植物の体の中では何が起こっているのか」という本です。嶋田 幸久さんという植物生理学者と、ライターである萱原 正嗣さんの共著となっています。ライターの手にかかっているので文書は読み易いのですが、化学の下地がない私にとっては、難しくて理解できない内容もあります。でも、ユニークな視点で植物について色々書かれているので、興味深く読み進めることができました。
「なぜ根っこは下に向かって、茎は上に伸びるのか」とか、「なぜ葉っぱの裏は白いのか」など、「チコちゃんに怒られる」に出てきそうな素朴なテーマが並びます。
根っこが下に向かう理由は、根の先端を覆って保護しているキャップのような「根冠(こんかん)」という組織があるからということだそうです。根冠には、成長部分を保護するほかに、もう一つ重要な役割があり、根冠の細胞の中に重力の方向を感じ取る粒(センサー)があり、この粒のある方向に根は伸びていくという仕組みのようです。
ですから、苗の栽培で、雑にポットを抜いて、根が切れてしまうと、その植物はうまく育たないということになりますので、花の生産にも細心の注意が必要ってことですね。
ちなみに、葉っぱの裏が白いのは、気泡によるものです。植物の身体の中は空気でスカスカといえるかもしれませんね。
■試験室での仕事について…
さて、慣性の法則に話を戻しますと…
試験室での仕事については、あえて慣性の法則にしたがうというか、余計な力を加えずに、淡々と様子を見るということを積み上げていく内容となります。
もちろん、クラシックの商品には愛着がありますが、試験や評価をするという時に、クラシックの商品を依怙贔屓して観察していても意味がないので、ニュートラルに、あえて淡々と仕事を続けていくってことになります。審判を下すのはあくまでお客様ですからね。
また、
クラシックにおける試験や評価について、改善しなくてはならないなと思う一つのポイントとして、「お客様からの評判が良く、問題がない時は、試験室に持ち込まれる商品の数が少なく、問題が発生すると試験依頼が増えるという傾向」があります。
問題が起きたときに適切に対処するためには、問題がない時の条件と比べて、その差を分析していくということが必要だと思っています。
創業時から取り扱っている花である、デンファレについては、毎週欠かさずサンプルを取り、良い時も、悪い時もその様子を観察していますので、良い意味で習慣化され、品質も安定していると思います。
■地球規模の温暖化
話がおおげさになってしまうかもしれませんが、今年の酷暑を経験して改めて思うことは、異常気象/温暖化は日本だけの問題ではなく、地球レベルの問題だということです。
私たちは、お花の栽培にとって適地とされる国や地域から、様々なお花を輸入していますが、その「適地」が変わりつつあります。かつて適地とされていた場所がそうではなくなり、新たな適地へと移っていく可能性が高まっているのです。
こうした状況を考えると、日本の花の需要に応えるための供給という視点で、いつまでも供給を維持・増加させ続けられるのかという疑問も浮上してきます。
花き業界全体、そしてクラシックとしても様々な戦略変更が求められているのかもしれません。たとえば、花を楽しむことをサービスとして捉える視点や、花そのものの品質で差別化を図る意識は、これまで以上に重要になっていると感じます。
先々のことを考えていくことが大切だと思いつつ、目の前で生鮮品を取り扱う仕事をしていると、なかなか考えるための時間を捻出することが難しいってことも事実ですよね。それでも、パーソル総合研究所と立教大学の中原淳教授による調査(2017-2018年)によれば、メンバー層は週に3.1時間、部長層では週8.6時間も会議に時間を費やしているといいます。この時間の一部を、現業から離れてじっくり考える時間に充てても良いのではないでしょうか。
もちろん、その時間を過ごす場所に美しい花があるとより豊かで創造的なひとときになるはずです。
花のある暮らしッく!
「いいね!」